おもしろい愛称はこう作る — 定着するネーミングライツ名の付け方7原則
ネーミングライツで最も難しいのは金額交渉ではなく、「実際に呼ばれる名前」を作ることです。契約しても誰も新しい名前で呼ばなければ、露出効果はほぼゼロになります。この記事では、定着した愛称の実例から7つの原則を抽出します。
成功の指標は「略されること」
愛称が定着したかどうかの最も分かりやすい指標は、住民が略して呼ぶようになったかです。
味の素スタジアムは「味スタ」、ES CON FIELD HOKKAIDOは「エスコン」。これらは施設側が押しつけた略称ではなく、利用者が自然に短くした結果です。略しやすい形になっているかどうかが、設計段階の最重要チェックポイントです。逆に略しようがない長い名称は、結局元の名前で呼ばれ続けます。
定着する愛称の7原則
- 4〜6音で略せる形にする — 「味スタ」「エスコン」はいずれも短い。冠部分(企業名・ブランド名)が長すぎると略称が生まれません。
- 元の施設名の機能部分を残す — 「◯◯総合文化センター」「◯◯野球場」のように、何の施設か分かる語を残します。iichiko総合文化センターは「総合文化センター」を維持しています。
- 地名を消さない — 埼玉県の県営公園では「サンクジャパン戸田公園」「GasOneグリーンパーク秋ヶ瀬」と、すべて元の地名(戸田・秋ヶ瀬)が残されています。地名を消すと地域の反発を招きます。
- 企業名の主張を和らげる語を挟む — 「GasOneグリーンパーク秋ヶ瀬」「アルネットホームスマイルパークしらこばと」のように、「グリーンパーク」「スマイルパーク」といった性格を表す語を挟むと響きが柔らかくなります。
- 企業名より商品ブランド名を検討する — 「三和酒類総合文化センター」ではなく「iichiko総合文化センター」。商品ブランドは企業名より柔らかく、文化施設との相性も良くなります。
- 読み方が一通りに決まる表記にする — 読み方に迷う表記は口に出されません。アルファベット表記の場合、日本語での読みが自然に決まるかを確認します。
- ローマ字と日本語の両方を用意する — 味の素スタジアムは正式表記が「AJINOMOTO STADIUM」、和文表記が「味の素スタジアム」です。使う場面で切り替えられるようにしておくと運用が楽になります。
実際にユニークな対象に命名した事例はユニークなネーミングライツ事例7選で紹介しています。
避けるべき3つのパターン
| 避けるべき例 | なぜ問題か | 代替案 |
|---|---|---|
| 株式会社まで入れる(「◯◯株式会社体育館」) | 長く、硬く、略せない | 法人格を外す(「◯◯体育館」) |
| 地名を企業名で置き換える | 地域の愛着を損ね反発を招く | 地名を残して企業名を冠する |
| 意味の分からない造語だけ | 何の施設か伝わらず利用者が混乱 | 機能を示す語(体育館・ホール等)を残す |
3番目は特に注意が必要です。企業側が「かっこいい名前」を求めるあまり、施設の機能が分からなくなると、案内表示としての役割を果たせません。
施設側:愛称の審査基準を先に作る
自治体側は、愛称の審査基準を募集前に公表しておくことが重要です。戸田市は「親しみやすさや呼びやすさなど、市民等の理解が得られる愛称とする」とし、さらに「法律や条例に違反するもの、公序良俗に反するもの、人権侵害に該当するものはネーミングライツの対象としません」と明記しています。
基準が先にあれば、応募企業も適切な提案ができ、選定後の批判も抑えられます。逆に基準がないまま進めると、決定後に「なぜこの名前なのか」という議論が起きます。住民対応の実務は住民の評判と乗り越え方、合意形成の手順は住民合意の5ステップをご覧ください。
定着させる運用が名前と同じくらい大事
良い名前を作っても、使われなければ定着しません。施設側の運用として、①公式サイト・館内サイン・印刷物で愛称を一貫して使う、②報道機関へのリリースで愛称を使う、③交通機関の案内や地図アプリへの反映を働きかける、といった取り組みが必要です。
企業側も、自社のウェブサイトやSNSで施設名を発信し、イベント開催時に愛称を使うことで定着を後押しできます。SNSを活用した具体的な手法は愛称設計とハッシュタグ戦略で解説しています。
名前を決めて契約したら終わりではなく、そこから数年かけて育てるものという認識が、成功と失敗を分けます。
よくある質問
略称は施設側で決めてよいのですか?
押しつけても定着しません。略しやすい形に設計しておき、自然に生まれるのを待つのが現実的です。
アルファベットの社名でも大丈夫ですか?
読み方が一通りに決まるなら問題ありません。「LINE CUBE SHIBUYA」のような事例もあります。
企業名を目立たせたいのですが。
目立たせすぎると住民の抵抗を招き、結果的に呼ばれなくなります。呼ばれる名前にすることが最大の露出効果につながります。
愛称の案は誰が作るのですか?
企業側が提案し、施設側が審査するのが一般的です。ネーミングノートでは愛称案のご相談も承っています。
愛称のご提案からお手伝いします
「どんな愛称にすれば通るのか」「自社名だとどう見えるか」といったご相談を無料で承っています。全国の定着事例を踏まえた愛称案をご提案します。
出典・参考: 戸田市公式サイト(ネーミングライツ制度について)


